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これ買いました:南木佳士「草すべり」/ 浅間山登山 [本]

勧められて読んだ。南木佳士という芥川賞作家の、私小説の短編集。

ある中年医師の日々の出来事を通じて、ダウナー気味な人生観みたいなのがぽつぽつと語られる短編集。全編、登山を題材にしており、主に長野県の浅間山とその周辺が舞台。

なかでも表題作の「草すべり」がすごく良かった。といってもストーリー自体はあっさりしたもの。ある日この主人公のもとに、かつて学生時代に気になっていた同級生(女性)から数十年ぶりに連絡が来て、浅間山登山に誘われ、数十年ぶりに再会することになる。あとは浅間山登山の一連の道程と情景が、淡々と描かれるだけで、物語自体にはたいした起伏は無い。

ただ、淡々として多くを語らない字面に反して、行間から想像させて、感じさせるものがあまりに多いので面白かった。

描写される情景や、女性との言葉少ないやりとり、主人公を通じてみる女性のしぐさなどを通じて、この女性の身上をあれこれ想像し、そして感じながら読み進んでいく感じ。そして中年だけあって、その内容が深くて、やや重い。とりあえず読み手に委ねる部分が大きいので、年齢をもっと重ねた時に読み返したら、また感じ方が違ってくるかも、とも思った。

小説やら映画やら、解説が多くて親切というか情報が過多で想像することが疎かになりがちな鑑賞に慣れ切っていたので、そういう意味でも新鮮な作品。いい意味でサービス精神に欠ける。楽しかった。


浅間山には去年、2度ほど登ってきたところだったので、主人公が見る情景がありありと浮かんできた。そういう意味でも楽しい。ちなみに〝草すべり〟とは、黒斑山(浅間山の外輪山のひとつ)付近の稜線から、カルデラの窪みに向かって下る途中にある急坂スポット。

浅間山写真(2009年5月)

車坂峠方面から登り、トーミの頭を望む。
反対側からトーミの頭を見上げたところ。
草すべりを上から見下ろしたところ。超急坂。道もわかりにくくてかなり怖い。
草すべりを下っているところ。眼下には湯の平が広がる。奥には前掛山。
ふもと近くから草すべりを見上げたところ。実際は写真で見る以上に急で怖い。
草すべりのふもとから、湯の平に向かう。針葉樹がやや深くなる。
賽の河原から望む浅間山(前掛山)。この辺りまでくると、荒涼とした景色に一変する。
前掛山とは反対側、賽の河原から望む外輪山の稜線。
おそらく仙人岳あたりから、外輪山に沿って黒斑山方面を望んだところ。

おおまかなロケーション


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