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これ買いました:「わたしを離さないで」(原題:Never Let Me Go) [映画]

カズオ・イシグロの長編小説の映画化。若干ネタバレ含みます。

舞台は現代英国の牧歌的な田舎町ですが、人間のクローン生産と臓器提供が制度化されて、合法的に行われている、という仮定の世界のお話です。臓器を提供するために生まれた主人公(キャリー・マリガン)の回想に始まり、子供時代に過ごした寄宿学校での日々や友人たちとの出来事、そして大人になり迎える親友や恋人たちとの別れが描かれます。

設定が示唆するようになかなかヘビーな作品で、鑑賞後はやりどころのない気分になります…。
登場人物たちは、臓器提供というあらかじめ決められた命の目的や役割を、所与のものとして受け入れる以外に選択肢を持たないのですが、しかしクローンであるという出自以外は普通の人間と変わらないので、自我や感情を持ち合わせています。恋人と過ごすためにせめてもう少しだけ猶予が欲しい、、、というささやかな願いすらも叶わない、絶対的な壁を前に描かれる、彼ら・彼女らの静かな感情の発露が、形容のしようがないほど残酷に映りました。。

作品についてはいろいろな見方があると思いますが、個人的には人間の残酷さを逆照射する物語だと受け止めています。人間が自ら創造した「人間」と対峙するという命題は、個人的にとても惹かれるテーマで、フランケンシュタインの怪物にはじまり、手塚治虫「火の鳥」や映画「ブレードランナー」などでも用いられてますが、自分としては、この作品で描かれる少年少女たちの悲哀はまさに、殺戮を繰り返すブレードランナーのレプリカントに重なって泣けます。。

なお、映画版は(良くも悪くも)若干サービス精神に欠けるというか、背景や物語で明示的に語られていない部分が多いので、原作小説もおすすめです。小説では世界観の設定から出来事のディテール、その時々の感情が詳しく語られるので、映画では想像に委ねられていた部分がだいぶ補われます。

それにしてもしかし、前髪ありバージョンのキーラ・ナイトレイもまた、かなりかわいいですね。。


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