「誰のためのデザイン?」などで有名な認知科学者 D.A.ノーマン氏による、コンピュータのインターフェースに関する著作。2000年に出版された「パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!」が改題されて2009年に新装再発売されたもの。

人間中心のユーザーインターフェースについて論じてきた著者が、その延長線上としてユビキタスコンピューティング(という言葉自体が少し懐かしさを感じさせる...)について論じた著作。情報環境は複雑で取り扱いの難しいコンピュータ中心から脱却して、人間中心で自然に利用できる情報アプライアンス(タスクベースのシンプルな専用コンピュータ)に移行されていくべき、という未来のあり方についてのお話です。

書かれてから10年以上経った現在、Google+Androidスマートフォンなどのデバイスが既に多くの提言を実現しており、そして残りに関しても彼らが中心的な役割を担っていくのだろうと予感させるものがあります。しかしその一方で、スマートフォンも見方によってはコンピュータを単にそのまま小さくしただけと言え、まだまだ十分に複雑であり、著者の思想でいえば過渡的なものにすぎないという気もしてきます。

いずれにせよ、電池や無線など著者の挙げるようなハード的な技術的要件はもうだいぶ揃っているように見えます。10年以上経って、そろそろ実現してもいい頃合いだろうと思われることばかりでもあったりするのですが、どうなんでしょう。著者がクリステンセンの破壊的イノベーションを引用するように、周辺から何者かが現れて、気づいたらいつの間にかガラリと変わっているのかも知れません。。